第一期終了による活動報告

「原発事故被害者の救済を求める全国運動」第一期活動報告

活動報告
2013年8月26日にキックオフした「原発事故被害者の救済を求める全国運動」は、①子ども・被災者支援法の幅広い適用と具体的な施策の実施、②賠償の時効問題の抜本的な解決のための特別立法――の2点を求めて、請願署名や全国集会、各地での周知活動を行ってまいりました。署名は合計197,617筆集まり、二度にわたり、国会に提出いたしました。
請願署名
呼びかけ人/実行委員会構成団体/賛同団体…(下記資料1)
第一次提出(2013年11月12日)79,856筆
第二次提出(2014年1月28日)117,761筆
紹介議員…61名(下記資料2)
主な活動
2013年
8月26日キックオフ記者会見/請願署名開始
9月21日原発事故被害者の救済を求める全国集会 in 福島
10月12日原発事故子ども・被災者支援法 宮城フォーラム
 (主催:原発事故子ども・被災者支援法 宮城フォーラム 実行委員会)
9~11月 全国各地の学習会、集会などと連携・協力
11月12日請願署名 第一回提出 集会・デモ・請願行動
2014年
1月28日 請願署名 第二回提出 院内集会 署名提出式
成果
目標にかかげた二つの事項、①子ども・被災者支援法の幅広い適用と具体的な施策の実施、②賠償の時効問題の抜本的な解決のための特別立法のうち、②については今回の原発事故の被害に限り、時効を3年から10年に延ばす特例法が12月4日、国会で成立しました。
残された課題
いまだに子ども・被災者支援法が有効に実施されているとは言い難い状況にあります。(下記資料3)主たる問題は以下の通りです
被災者・支援者の声を政策に反映させる仕組みがない…常設の協議機関が必要
◆支援対象地域定が狭い…少なくとも、福島県および汚染状況重点調査地域全域を含むことが必要
長期にわたる原子力災害に対応した、雇用や住宅を含む避難者への支援がない
     特に、長期および無償の住宅支援制度の確立が必要
     ※借上げ住宅制度の適用は、2016年3月までに
抜本的かつ包括的なな被ばく低減政策が必要
     特に、子どもたちの保養に関しての国家制度が必要
◆第十三条第二項第三項に定める健康管理支援が実施されていない
     ※甲状腺癌の深刻化(疑い含めて103人およびリンパ節転移)
     ※甲状腺癌以外の疾病の懸念が高まっている
  ⇒国が主体的に関与すべき
  ⇒健診…地理的範囲の拡大の内容の充実、健康管理手帳の交付
  ⇒医療費減免
第一期終了と第二期の立ち上げ
今までの活動で一定の成果をあげたというものの、原発事故被害者をとりまく状況は一向に改善されていません。原発事故子ども・被災者支援法は真の意味で実施されたとはいえません。
よって、請願署名を主軸に置いた第一期の「原発事故被害者の救済を求める全国運動」は、2014年9月末日をもって終了とし、第二期の「原発事故被害者の救済を求める全国運動」を立ち上げる事といたしました。
第二期の活動では、原発事故被害者にとって緊急性の高い施策の実現を求め、立法措置を含め、世論を喚起するとともに、政府や国会議員への働きかけを行うこととなりました。具体的には下記の通りです。
原子力災害に伴う避難者の住宅問題の解決のための立法措置
健診の支援・医療費減免措置
子どもたちの保養プログラムを実施する国家体制の構築
原発ADRの和解案の完全実施
このため、広範な各層で連携し、各地での集会等による世論の喚起、調査、請願、ロビイングなどを予定しています。つきましては、引き続き、みなさまにご協力をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
 具体的な内容としては、とりわけ被害者にとって急務である個別具体的な以下の事項について、世論を喚起し、必要に応じて、新法策定の提案を含め、政府・国会に対応迫ります。
原子力災害に伴う避難者の住宅問題の解決のための立法措置
健診の支援・医療費減免措置
子どもたちの保養プログラムを実施する国家体制の構築
原発ADRの和解案の完全実施
連絡先  原発事故被害者の救済を求める全国運動実行委員会
【福島】 いわき市議会創世会 佐藤和良
福島県いわき市平梅本21
TEL : 0246-22-1111(代表)内線4132 FAX : 0246-25-8380
【東京】 国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)
東京都豊島区池袋3-30-22-203
TEL : 03-6907-7217 FAX : 03-6907-7219
(資料1)
原発事故被害者の救済を求める全国運動 実行委員会構成
共同代表
小池 達哉    福島県弁護士会 会長
宇野 朗子    福島市から京都府へ避難
佐藤 和良   いわき市議会議員、原発事故子ども・被災者支援法推進自治体議員連盟共同代表
呼びかけ人(五十音順)
市村高志  特定非営利活動法人とみおか子ども未来ネットワーク理事長
伊藤恵美子 子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク
宇野朗子  福島市から京都府へ避難
海老原夕美 日本弁護士連合会副会長
大石雪雄  西郷村議会副議長
大内雄太  福島市議会議員
大賀あやこ 大熊から会津若松へ避難
大波栄之助 小国地区復興委員会委員長
落合恵子  作家
片岡輝美  会津放射能情報センター
加藤好一  生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長
鎌田慧   ルポライター
亀山ののこ 写真家
河﨑健一郎 福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク共同代表
菅野喜明  福島県伊達市市議会議員
木田光一  福島県医師会副会長
栗田暢之  レスキューストックヤード代表理事
小池達哉  福島県弁護士会会長
小島力   葛尾村原発事故賠償集団申立推進会代表
小松恒俊  南相馬市ひばり地区復旧・復興対策協議会会長
佐藤和良  いわき市議会議員
佐藤健太  飯館村村民
佐藤富男  西郷村議会放射能対策特別委員会委員長
菅野美成子 伊達市在住
高野光二  福島県議会議員
高橋文郎  福島県司法書士会会長
中手聖一  原発事故子ども・被災者支援法市民会議代表世話人
野口時子  3a!in郡山
長谷川克己 郡山市から静岡へ避難
藤田和芳  株式会社大地を守る会代表取締役
蛇石郁子  郡山市議会議員
増田薫   放射能から子どもを守ろう関東ネット
丸山輝久  原発被災者弁護団弁護団長
満田夏花  国際環境NGO FoEv Japan理事
武藤類子  福島原発告訴団団長
山内鉄夫  日本司法書士会連合会副会長
山澤征   南相馬市小高区行政区長連合会会長
山本伸司  パルシステム生活協同組合連合会理事長
湯浅誠   社会運動家
渡部紀佐夫 南相馬市太田復興会議会長
渡部一夫  南相馬市ひばり復旧・復興対策協議会事務局長
構成団体
会津放射能情報センター、いわきの初期被曝を追及するママの会、大熊町の明日を考える女性の会、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン、県内自主避難連絡会、原子力資料情報室、原発事故子ども・被災者支援法市民会議、原発事故子ども・被災者支援法ネットワーク、原発被災者弁護団、国際環境NGO FoE Japan、子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、子どもたちを放射能から守るみやぎネットワーク、静岡・子ども被災者支援法を考える会、大地を守る会、国際協力NGOセンター(JANIC)、ハイロアクション福島、パルシステム生活協同組合連合会、ピースボート、ヒューマンライツ・ナウ、福島原発30キロ圏ひとの会、福島原発事故緊急会議、福島原発震災情報連絡センター、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)、福島老朽原発を考える会、富士の麓のうつくし村
賛同団体
原発事故子ども・被災者支援法推進自治体議員連盟、那須野が原の放射能汚染を考える住民の会、有害化学物質から子どもの健康を守る千葉県ネットワーク、女たちの広場、緑ふくしま、NPO法人アウシュヴィッツ平和博物館、NPO法人ポラン広場東京、みちのくの会、子どもたちを放射能から守る伊那谷ネットワーク、放射能からこどもを守ろう関東ネット、福島のこどもたちとともに・世田谷の会、パルシステム東京、あいコープみやぎ、パルシステム千葉、原発いらない福島の女たち、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、反貧困ネットワーク、WE21ジャパン、子どもと未来を守る小金井会議
賛同人(敬称略)
丸山輝久、松原秀臣、中手聖一、有沢加奈枝、多々良哲、藤原寿和、新妻香織、小原直樹、橋本あき、 安斎総一郎、小川幸子、菅野久美子、七戸わこ、菅野真一、柴口賢一、鈴木晃代、岩下潔、佐藤美穂 奥村岳志、島明美、佐藤吉雄、井上啓、和田央子、譽田礼子、鈴木れいこ、安達由起、ハルキハルコ、佐野壽子、大野博美、伊藤とし子、木村結、小高純子、佐藤照子、石山謙一郎、高萩弘一、菅野浩、堀野公子、木幡ますみ 木村肇二郎、松谷清、大山かよ、室原恭三、梅澤博之、小池光一、小池順子、大山滋、瀬川芳伸、高橋華枝、中西邦仁、斎藤静寛、服部賢治、小椋民子、佐藤孝子、中村光一、冨塚天夫、松原 秀臣、平山 実、木村肇二郎、山口輝生、多久和久美子
(資料2)
紹介議員一覧
衆議院
阿部知子
泉健太
荒井聰
椎木保
佐々木憲昭
赤嶺政賢
若井康彦
奥野総一郎
田嶋要
玉城デニー
近藤昭一
吉川元
照屋寛徳
井坂信彦
佐藤正夫
山内康一
渡辺喜美
浅尾慶一郎
三谷英弘
穀田恵二
笠井亮
畠中光成
中島克仁
菊田真紀子
志位和夫
塩川鉄也
高橋千鶴子
宮本岳
参議院
山本  太郎
渡辺 美知太郎
井上  哲士
有田  芳生
川田  龍平
吉良 よし子
市田  忠義
石橋  通宏
安井 美沙子
難波  奨二
福島 みずほ
長浜  博行
辰已 孝太郎
相原 久美子
山田  太郎
紙   智子
徳永  エリ
平野  達男
仁比  聡平
松沢  成文
又市  征治
田村  智子
薬師寺 みちよ
倉林  明子
中西  健治
山口  和之
神本 美恵子
山下  芳生
大門 実紀史
小池   晃
小川  勝也
荒井 広幸
吉田 忠智
(資料3)
「原発事故子ども・被災者支援法」の現状と課題
「子ども・被災者支援法」は、福島原発事故の被災者の状況を解決したいという国会議員の動きを、多くの被災者・市民が、後押しした結果である。福島原発事故被災者への支援策を包括的に定めた法律だ。
同法は「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分解明されていない」(第一条)と明記。「居住」「避難」「帰還」の選択を被災者が自らの意思で行うことができるよう、医療、移動、移動先における住宅の確保、就業、保養などを国が支援する。また、子どもの健康影響の未然防止、健診や医療費減免などが盛り込まれている。
政府が、実施のための「基本方針」を定めることとされる。この中で、「一定の線量」以上の地域を「支援対象地域」として指定する。
届かなかった被災者・自治体の声
子ども・被災者支援法は、制定後、1年以上もの間実施されず、ついに今年8月22日、11名の被災者が、国を相手取って提訴に踏み切った。
 復興庁が、基本方針案を発表したのは、そのわずか8日後の8月30日。9月23日までのパブリック・コメント期間中、4,963件の意見がよせられた。京都、新潟、福島、東京などで、市民主催で子ども・被災者支援法の内容や復興庁の基本方針の問題点などに関する学習会が開かれた。
さらに住民からの強い要請もあり、宮城県丸森町、栃木県那須塩原市、千葉県野田市・我孫子市などの多くの自治体が批判的意見を提出したことは異例のことであった。
よせられたパブリック・コメントの多くは、各地で公聴会を開催するべき、被ばく線量年1ミリシーベルト以上(※注)を支援対象地域にすべき、災害救助法に基づく住宅支援の期間を延長すべき、福島県外においても被ばくに対応した健診を行うべき、などの内容であった。パブリック・コメントの期間中、復興庁は福島および東京で説明会を実施。どちらの説明会場でも、参加者が強い口調で、公聴会などの意見聴取を各地で行い、それにもとづき、基本方針の見直しを求めた。
(注)自治体の意見書では、汚染状況重点調査地域の毎時0.23μシーベルト以上を支援対象地域とすべき、というものが多かった。
被災者・支援者は何回も要請書を出し、記者会見を開催し、「基本方針に被災者の声を」と訴えた。
このように強い批判が噴出したのには、後述するように基本方針案の内容が「子ども・被災者支援法」の理念に反し、支援対象地域を極めて狭く設定し、支援の手を心待ちにしていた被災者の期待を裏切るものであったからだ。
しかし、これらの意見はまったく反映されることなく、同基本方針は10月11日、閣議決定された。
基本方針の内容と問題点
 基本方針閣議決定の朝には、各地からの被災者が官邸前で抗議集会を開き、また記者会見を開催した。
 「想いをこめて意見公募に意見を書いたのに…。被災者を切り捨てるような決定は許せません」。集会に参加した郡山に住むYさんは声を震わせた。
「子ども・被災者支援法」の第五条第三項では、「政府は、基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させる」と書かれているが、実際は被災者の声は、まったくといっていいほど反映されなかった。
さらに基本方針は、「支援対象地域」は福島県内浜通り・中通りの33市町村としている。支援法が求めている線量基準を定めていない上に、範囲があまりに狭すぎるのが問題である。
その他に『準支援対象地域』が設定されているが、これは既存の政策それぞれの適用地域を呼び換えただけのもの。たとえば、生活習慣病対策といった従来の施策も支援策に盛り込まれているが、対象が「全国」に及ぶものももある。その場合は、「準支援対象地域」は全国ということになる。
全施策120のうち87の施策が、既存の施策の寄せ集めになっている。新規施策も、大半は除染と健康不安の解消に関わるものだ。最も重要な「避難の権利」を保障する避難者支援策は、避難者の多い地域における「マザーズハローワークの充実」などにとどまり、具体的な施策が書かれていない。
福島県県民健康調査に関しては、多くの専門家や市民は、甲状腺癌や生活習慣病のみをターゲットとした現在の福島県県民健康調査の見直しを求めてきたが、検討された形跡はない。また、千葉県の自治体や住民団体が求めていた、福島県外における健診の実施などの健康管理については、「個人線量計の配布による外部被ばく量の測定」「有識者会合を設置して検討」とするにとどまった。
一方、“自然体験活動”への支援が福島県外にも拡大されたことや、民間団体を活用した被災者支援の拡充が盛り込まれたことは、わずかながら前進であった。
形骸化してしまったかの感がある、「子ども・被災者支援法」。しかし、基本方針の内容がどうあれ、法律が現に存在していることは、変わりのない事実である。私たちは、今後、各地の被災者・支援者とつながりあって、地道に行政と対話を重ねながら、民間団体や自治体レベルの支援実績を国レベルの施策に反映させていく道を模索している。(文責:満田夏花/FoE Japan )